くるり『さよならストレンジャー』(1999)

さよならストレンジャー』はくるりのファーストアルバムで、1999年に発売された。

以下、1曲ずつ感想を。

 

1.ランチ

 ミディアムテンポのしっとりした曲。ファーストアルバムの1曲目にこういう曲を持ってくる感じが、くるりのどことなく老成された雰囲気を象徴している。歌詞も妙な説得力がある。

2.虹

 初期くるりの名曲。昔話的な歌詞が面白い。サビが突出していないというか、サビ以外/サビという区別なく流れるようなグルーヴが心地よくて大好き。それでいてセンチメンタルな雰囲気というか、歌い方などに青臭さも感じられていい。

3.オールドタイマー

 アルバムの中では異色なアップテンポの曲。歌詞にもあるとおり釣掛駆動の電車のことを歌っている(おそらく京阪電車)。ただアップテンポで駆け抜けるだけでなく、コーラスワークがいい。

4.さよならストレンジャー

 またしっとりとしたフォーキーな曲。サイケフォークっぽい音もある。「さよならストレンジャー」とつぶやくようなサビがとてもよく、解放感がありながら郷愁や諦念がある。

5.ハワイ・サーティー

 インスト曲で、『さよならストレンジャー』~『東京』の橋渡しをしている。これで前半終了。『東京』から後半戦。

6.東京(アルバム・ミックス)

 くるりの大名曲であり、東京に行くとこの曲が頭に流れる、という人も多い(はず)。くるりは歌詞がいい、というイメージもこの曲で定着した気がする。

 「東京の街に出て来ました あい変わらずわけの解らない事言ってます」

7.トランスファー

 シンプルでとてもまとまっている良曲。『東京』に続いて東京を舞台にして歌っている。『オールドタイマー』とこの曲で兄弟という感じがする。

 「嗚呼 薄紅の東京の空は悲しい」

8.葡萄園

 インスト曲。次の『7月の夜』の散歩道の背景として葡萄園があり、暗闇が広がる様子が思い浮かぶ。

9.7月の夜

 まったりとしたバラード曲。夜の散歩道の、落ち着いていると同時にどこかそわそわしている感じ。 キーボードの音色とか拍子の変わり方とか、プログレっぽくもあり、変態くるりの味がよく出ている。一時期この曲を聴きまくっていた。

10.りんご飴

 またバラード曲。サニーデイ・サービスっぽい。遠い夏の思い出のことを歌っている。他のバラード曲と比べてもあまり印象に残らないかな、という印象。

11.傘

 大人しいAメロからサビで爆発するグランジ的な曲。2ndの『図鑑』っぽくもある。

12.ブルース

 バラード曲でありながら展開があり飽きない。あと、出たり入ったりする曲である。曲調は激しくないものの、このアルバムで最も攻撃的な曲かもしれない。9分近くあるが、『ブルース』は前半の6分ほどで、残りは『ランチ』の続きが流れてアルバムを締めくくる。

 

総評

 フルアルバムとしてはファーストという青臭さと、『もしもし』、『ファンデリア』という2枚のミニアルバムに続く3枚目の作品としての腰を据えた感じが同居しているアルバム。シンプルなバンドサウンドと、京都と東京というふたつの街を舞台にした情緒豊かな歌詞を融合させて、ファーストアルバムにして唯一無二のグッドミュージックを生み出している。

 くるりの他のアルバムに比べて癖がなく、聞きやすい作品ではあるが、後半はバラードが連続するため眠くなるかも。

 

オススメはこの曲!

 2.虹

 3.オールドタイマー

 4.さよならストレンジャー

 6.東京

 7.トランスファー

 9.7月の夜

 

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