くるり『THE WORLD IS MINE』(2002)

くるり『THE WORLD IS MINE』は前作『TEAM ROCK』から約1年1ヶ月ぶりとなる4thアルバムである。

 

以下、1曲ずつ感想を。

 

1.GUILTY

 ちょっと低めの心電図の音のような電子音を刻みつつ、ゆったりとアコギを中心に流れていく。しかし、途中で曲調は一変し、激しいドラムの後に美しいコーラスが響くというドラマティックな展開。初めてこの1曲目を聴いたとき「あ、このアルバムはなんかすごいぞ」と思った。

2.静かの海

 前作『図鑑』でみせた音響系の遊びを取り入れつつ、より静かに、チルアウト的な様相を呈している曲。

3.GO BACK TO CHINA

 銅鑼やギターリフが中華風味で面白いアプローチをしている。単体で聴くと2曲目までの流れに合わないような曲調だが、2曲目がフェードアウトした静寂の中のイントロはシビれる。

4.WORLD'S END SUPERNOVA

 くるりにおけるダンスミュージックの到達点といえる名曲で、当時流行っていたダフト・パンクなどをうまく消化して、日本的な情緒をも生み出すことに成功している。ただただビートに乗って体を動かすだけで快楽を得られる曲。

5.BUTTERSAND/PIANORGAN

 インスト。前曲と同じ電子音のループで、同じリズムがキープされる。それほど大きな展開があるわけでもなく、前曲の流れでそのまま踊りたい人のためのボーナスステージといった感じ。

6.アマデウス

 ストリングスを取り入れつつ、ピアノがリズムをキープしている。優しい静かなバラード。「旅はこれから これから」の部分はいい。

7.ARMY

 なんとなくテレヴィジョンの「MARQUEE MOON」のような歪みのないギターサウンドが面白い。曲全体に大きなうねりがあるようで、リズムに乗ることができて楽しい。

8.MIND THE GAP

 アルバムの流れを一旦、区切るような曲。これはこれでいいけど急にサイケデリックすぎると思わないでもない。

9.水中モーター

 ギター、ドラムなどは「ワンダーフォーゲル」と似た雰囲気がある、(音は)素直なギターポップ。ボーカルに、スキューバダイビングのゴボゴボしたエフェクトをかけているのが特徴的。アウトロが長い。

10.男の子と女の子

 アコギのシンプルな曲。くるりらしからぬ、ひねくれていない歌詞で、メロディーも印象的でダレない。しかし、逆に歌詞は素直すぎて気恥ずかしい。

11.THANK YOU MY GIRL

 ダンスロック、テクノもいいけどやっぱり、くるりにはギターポップが似合うな、と嬉しくなる。小曲ではあるけれど、このアルバムにおける存在感は大きい。あと、コーラス、ギターソロなどビートルズの「And Your Bird Can Sing」を思い出す。

12.砂の星

 幸福感あふれる曲。しかしサビは短調で、切ない雰囲気もある。

13.PEARL RIVER

 入眠にバッチリのまったりとした曲。2ndの「宿はなし」、3rdの「リバー」と、アルバムの最後にはフォーキー、カントリーな曲が続いてきたが、今回はボートを漕ぐ音のまま終わる。

 

総評

 前作『TEAM ROCK』でのテクノ、ダンスミュージックへの取り組みを更に深め、より洋楽の音楽性に近付いたアルバム。テクノ、ダンスだけでなく、サイケデリックサウンドにも傾倒していて、くるりとしては初めて海外(イギリス)でレコーディングしたこともあり、実験的な側面が強い。

 1曲1曲としての印象はあまり強くないけれど、アルバム全体を通して聴くと重厚感があり、統一感も失われていない。しかし、全体的にポップではなく、難解かつ洋楽のアルバムにある雰囲気が強いためわかりにくいアルバムである。そのため、名盤とする人がいる一方で、まったく理解できない、気に入らないという人もいる。くるりを初めて聴く人、なかでもダンスミュージックやテクノに特に興味がない、または洋楽の音楽性が苦手な人にはおすすめできないアルバムとなっている。

 なお、このアルバムを最後にドラムの森が脱退する。

オススメはこの曲!

 1.GUILTY

 3.GO BACK TO CHINA

 4.WORLD'S END SUPERNOVA

 11.THANK YOU MY GIRL

 

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