2018年マイ・ベスト・アルバム?(洋楽編)

もう2月中旬になろうかという頃ですが、去年(2018年)によく聴いた洋楽のアルバムを紹介します。

しかし邦楽編とは違って、洋楽は聴いていないアルバム(特にラップ・ヒップホップ系)も多くて、チャートで上位のものなど様々なものを聴いた上でのベストというより個人的に気に入ったものをラインナップしただけ、といった具合になります。

 

順位はベスト5だけつけて、あとは発売日順に並べることにしました。

加えて、spotifyyoutubeへのリンクを貼っておきます。

 

 

Superorganism/Superorganism

https://youtu.be/VGgaRmRP1ck

 

 

 

Iceage/Beyondless

https://youtu.be/xdRnQ3tHy1o

 

 

 

Waxahatchee/Great Thunder

https://youtu.be/s4Erec0dAUE

 

 

 

Villagers/The Art Of Pretending To Swim

https://youtu.be/G7Xqo6dvDmM

 

 

 

Carl Broemel/Wished Out

https://youtu.be/t2VbgjKLV3g

 

 

 

Amber Arcades/European Heartbreak

https://youtu.be/OEdVjvJM464

 

 

 

Lala Lala/The Lamb

https://youtu.be/wu9zw0CDtnA

 

 

 

Marissa Nadler/For My Crimes

https://youtu.be/bDnupH9_GYc

 

 

 

HARETS/New Compassion

https://youtu.be/cGf-JkdnAjQ

 

 

 

Fucked Up/Dose Your Dreams

https://youtu.be/1iaArL6rYl4

 

 

 

Swearin'/Fall into the Sun

https://youtu.be/bnlMfjOT7kI

 

 

 

Kurt Vile/Bottle It In

https://youtu.be/7mbh43HgT4U

 

 

 

Valley Maker/Rhododendron

https://youtu.be/zN_MyHEpXdg

 

 

 

Connan Mockasin/Jassbusters

https://youtu.be/q2aKW7Cv9oU

 

 

 

Papercuts/Parallel Universe Blues

https://youtu.be/gHEA78rEKpM

 

 

 

Nao/Saturn

https://youtu.be/FRCQ24V8eO8

 

 

 

Bill Ryder-Jones/Yawn

https://youtu.be/6D2k-aEqZgk

 

 

 

The good, the Bad & the Queen/Merrie Land

https://youtu.be/6p1mq19htTc

 

 

 

【ベスト5】

 

 

5.   Shame/Songs of Praise

https://youtu.be/_MVLqZpnwow

 

 

 

 

4.  Spiritualized/And Nothing Hurt

https://youtu.be/4vNrHoLS1zc

 

 

 

 

3.  The Lemon Twigs/Go to School

https://youtu.be/4pzEEbOrJRg

 

 

 

 

2.  Mourn/Sorpresa Familia

https://youtu.be/y6X1n69eBAQ

 

 

 

 

1.  Idles/Joy as an Act of Resistance

https://youtu.be/VODKZxsRa_E

 

 

1位のアルバムにひとこと:男くさくて最高。

 

 

2018年マイ・ベスト・アルバム(邦楽編)

毎年恒例、一年の音楽を総括する時期が来た。

各メディアやとてもつよい音楽マニアたち(褒め言葉)のブログを参照すればいくらでも「2018アルバム・ランキング」なんて記事は出てくるけれど、自分には月に何枚もアルバムを買う資金はないし、仮に「ベスト50」を決めようとしても、そもそも50枚なんて新作は聴けるはずがないのだ。

それでも、レンタルやサブスクを駆使しながら、なんとかベスト21を決めることができた。

ここでは、〈アルバムは聴いてないけどこの曲はよく聴いたよね部門〉〈アルバム部門〉の2つの部門を設けたいと思う。

〈アルバムは聴いてないけどこの曲はよく聴いたよね部門〉ではその名の通り、アルバムを通しては聴いていないけど、曲単位でよく聴いたものをピックアップしてベスト4にした(少ない)。

〈アルバム部門〉ではフルアルバム(一部ミニアルバム)を対象としてベスト21を掲載する。

 

アルバムについて、spotifyがあればそのリンクと、youtubeへのリンクを貼っておきます。 

 

 

 〈アルバムは聴いてないけどこの曲はよく聴いたよね部門〉

 

4.DAOKO『終わらない世界で』

 My Little Loverの『Hello,Again』とか好きなだけあって、CMでサビの部分だけを聴いたときに「これはいい」となった曲。調べたら作曲は小林武史と知って納得。

フルで聴いても、柔らかくセンチメンタルなポップさだけでなく、DAOKOの持ち味であるラップパートもちゃんとあり、曲全体のバランスはよかった。あと「頑張ってみるから 終わったら抱きしめて」という歌詞はDAOKOが歌うことで説得力が生まれる。

 

3.テンテンコ『Animal’s Pre-Human』

声が幼いから童謡のような曲にも思えるが、neco眠るとコラボしているだけになかなかカオス。 歌詞も、人間の偽善や無責任さを批判して、辛辣に「猫の方が賢い気がする」と、このMVをバックに歌われていてなかなかカオス。MVは無機質で気持ち悪くて最高なので是非、一緒に聴いてほしい。

 

2.Lucie,Too『Lucky』

 イントロのジャキジャキのギターが既にいい。既にいいのだけど、サビを、サビとも言えないようなあっさりした、潔いものにしようとした心意気が本当に素晴らしい。サニーデイ・サービス『青春狂走曲』もこの構成だけど、「A→B→サビ→A→B→サビ」ではなく「A→B→A→B」という構成が、洋楽では普通にあるけれど邦楽ではほとんど見かけない。バンド初のアルバムのリード曲が「A→B→A→B」で、それでいてスリーピースのガールズバンドなんて、好きにならないわけがない。

 

1.星野源『アイデア

 今年を象徴する曲といえばこれ。非常にキャッチーで、なぜ好きなのかと聞かれればキャッチーだから、となるのかもしれないが、それだけでは終わらない何かがある。普段あまり音楽を聴かないような人も星野源の新曲やアルバムは聴いている、ってすごいことじゃないかと思う。

アルバムはまだ聴いていないのでランキングに入れるとしたら来年になるんじゃなかろうか。ミュージック・マガジンもそうなるかもしれない。MUSICAのランキングにはアルバム発売前にも関わらず入っていたけど、あれは何だったんだろうか・・・幻・・・?

 

〈アルバム部門〉

 

 

21.横沢俊一郎『ハイジ』

 新鋭宅録SSWによるファーストアルバム。ジャケットだけ見ると爽やかだが、曲は変態サイケドリームポップという感じでクセがすごい。フリッパーズ・ギターやディーパーズのような少年風のボーカルに厚いエフェクトがかかり、アルバム全体に浮遊感がある。イントロのシンセが強烈なキラーチューンの『こんな感じのストーリー』、ギターが特にサイケなバラード『僕ら無敵さ』など、耳に残る曲も多く、これからの活動も楽しみ。

 

 

20.betcover!!『サンダーボルトチェーンソー』

洒落た音作りをしながらも、どこか歌謡曲的な懐かしさを感じる。 

重めのドラムイントロから一転、一拍置いて曲調が変わり、ハミングが心地よい『新しい家』、フィッシュマンズのようなミドルテンポ曲『平和の天使』などいい。

19歳が作ったとは思えない渋めのテイストが面白いし、個人的には同世代のアーティストとして期待を寄せている。

https://youtu.be/AnEmQSn02OU

 

 

 

19.バレーボウイズ『なつやすみ’18猛暑』

 第一声から力強い1曲目の『アサヤケ』や、『海へ』『卒業』など、海&青春&サイダーという夏休み感満載のアルバム。何より、合唱のもつグルーヴ感に目を付けてロックサウンドに乗せたという試みが面白いし、どの曲もメロディーが優れていて耳なじみがいい。綺麗にハモっていそうでハモりきっていないのもいい。

https://youtu.be/1_qT9AwQqu0

 

 

 

18.アナログフィッシュ『Still Life』 

どんどんお洒落になっていくアナログフィッシュの、安定感あるアルバム。『静物/Still Life』や『Uiyo』などの柔らかくグルーヴィーな曲も持ち味だが、その一方で『Dig Me?』のような力強いポップもアナログフィッシュらしい。何にせよ、2人のコーラスワークは一級品である。

https://youtu.be/uzCeNyjxj_U

 

 

 

17.冬にわかれて『なんにもいらない』

寺尾紗穂のボーカルの魅力はそのままに、バンドアンサンブルがとても優れている。ポップ・ジャズ・ソウルなど様々な音楽を孕みながら、暴れまくるといってもいいほど跳ねるバックバンドを寺尾のボーカルが優しくまとめ、アルバム全体の雰囲気は、激しいながらも落ち着いた奥深いものに仕上がった。

https://youtu.be/d4p5gLhSzHI

 

 

 

16.羊文学『若者たちへ』

 きのこ帝国の影響を感じる鋭いギターサウンドもさることながら、メロディセンスのよさも秀でている。特に『Step』は繊細さと力強さが同居した傑作で、2018年のベストソングといってもいい。あと、シークレットトラックは(狙ったものだと思うが)聴いていてとても不気味。この不気味さをうまく融合させたような曲も聴いてみたい。

https://youtu.be/HC84nW9mpoo

 

 

 

15.きのこ帝国『タイム・ラプス』

前々作『猫とアレルギー』ではその持ち味が失われたように思えたきのこ帝国だが、このアルバムは『フェイクワールドワンダーランド』以前のギターサウンドとメジャーデビュー後のポップなメロディーとのバランスよく仕上がっている。

『WHY』や『夢みる頃を過ぎても』は印象的なメロディーだったし、『金木犀の夜』を筆頭にセンチメンタルな雰囲気をアルバム全体が纏っている。

https://youtu.be/Ay7etoJxj4U

 

 

 

 14.Klan Aileen『Milk』

本能的に、死臭を漂わせながら黒い塊がうごめいているという印象のアルバム。洞窟の中で聴いているような、強烈なリバーブがかかったボーカルやギターの音色は深い水の中で鳴っているようにも思える。

不穏かつ雄大なリフが頭から離れない『脱獄』『流氷』、制御を失ったような硬いギターが前面に出た『Masturbation』など、邦楽ではあまり耳にすることのできない外国の空気感あるサウンドが目白押しである。

https://youtu.be/cCfN8_3kLuk

 

 

 

 13.D.A.N.『Sonatine』

メロディーの美しさが際立つ『Chance』、タブラがユニークな『Replica』など長めの曲と、『Cyberphunk』『Debris』などインタールード的小曲のバランスがよく、聴いていて心地よい。

中でも『Borderland』は10分を超える長尺で、満足いくまで酔うことができる。

https://youtu.be/Rfi4OQf9IP0

 

 

 

12.シャムキャッツ『Virgin Graffiti』

Blurの『Go out』を彷彿とさせるリズミカルなギターリフが特徴的な『逃亡前夜』、『完熟宣言』などストリングスやコーラスに趣向を凝らしたギターポップ、アルバムを締めくくる名曲『このままがいいね』と、いい意味で力の抜けた、優しい雰囲気のアルバム。クラブミュージック的なグルーヴが全編通して気持ちいい。

https://youtu.be/5Jtd5nmI0Fc

 

 

 

11.Helsinki Lambda Club『Tourist』

ヘルシンキ・ラムダ・クラブといえば前につんのめるような曲が印象的で、例えばアクモン、Andymoriの系譜かと思っていたけど、このアルバムでは本来の、メロディアスで小気味いいギターサウンドが光っている。

サビが軽やかな『マリーのドレス』、Pavementっぽくて一番好きな『引っ越し』、遊び心を入れつつやっぱりかっこいい『ロックンロール・プランクスター』、一拍おいたリフがたまらない『何とかしなくちゃ』など、若手ロックバンドの中では最も信頼できると思ったアルバム。

https://youtu.be/mvt2HwuVCkI

 

 

 

10.おとぎ話『眺め』

 1曲目の『HOMEWORK』を筆頭に、『HEAD』などサビがあまり目立たない、ループミュージック的な曲構成が特徴的。

加えて、『ONLY LOVERS』『綺麗』『魔法は君の中に』など、おとぎ話の持ち味ともいえるメロディーの良さも十分に発揮されている。特に『綺麗』はおとぎ話史上最上級のメロディーだと個人的に思う。

https://youtu.be/9wOj2D_K8Ks

 

 

 

9.Homecomings『WHALE LIVING』

 バンドとしてはじめての日本語詩も、アルバムの雰囲気に合うような優しい物語調でいい。個人的には『HURTS』のようなディストーション気味のサウンドが好きだけど、このアルバムはこのアルバムで、ネオアコ・フォークのジャンルとして聴ける。『Songbirds』だけ毛色が違うようにも思えたが、おそらく『WHALE LIVING』という一つの物語を、また違うレイヤーから締めくくるエンドロール的な役割を果たしていて、そう考えるとあまり違和感はない。

Homecomingsはよくウェス・アンダーソン作品やその劇中の音楽に影響を受けたとインタビューで言及しているけれど、この『WHALE LIVING』は『ムーンライズ・キングダム』とよく雰囲気が似ていて、ニューイングランドもしくはスコットランドの田舎の海岸にある小さな町を想起させる気がする。

https://youtu.be/quthO82MU7w

 

 

 

 8.KIRINJI『愛をあるだけ、すべて』

バンド体制になったのちコトリンゴが脱退したKIRINJIだが、このアルバムでは海外の音楽シーンをふまえ、よりエレクトロニックな、テクノ・ダンスミュージック色を強めた。

 それでもメロディーの良さは健在で、『AIの逃避行』『時間がない』などの特にポップな曲、『After the Party』『悪夢を見るチーズ』など少しひねくれた曲、『新緑の巨人』『silver girl』など後半にかけてのメロウな曲と、バラエティ豊かに完成度の高いポップスを鳴らしている。新生KIRINJIの現時点での決定版となるアルバム。
https://youtu.be/iboM79ANVuo

 

 

 

7.Taiko Super Kicks『Fragment』

飄々としていながらもどこか薄気味悪い感じはOGRE YOU ASSHOLEやミツメの系譜にはあると思う。ただ今作は『低い午後』などの時期と比べて、クリアなギターサウンドと切れ味いいアンサンブルが弾けていて、気味の悪さは抜けてきた気がする。

一方で『うわさ』のようなフォーキーで懐かしいテイストもあって、硬くて冷たい印象のアルバムながら、スムーズに脳に浸透する緩やかさを持ち合わせた、不思議なアルバムである。

ただひとつ、『のびていく』なんて聴きやすい方ではあるけれど、できれば次のアルバムではひとつだけとびきりポップでキャッチーな曲を作ってみてほしいという願望もある。

 https://youtu.be/0v_pfx91KyU

 

 

 

6.くるりソングライン』

くるりの4年振り、12枚目のアルバム。前作『THE PIER』が様々な要素を詰め込んだ、多国籍風アルバムだとしたら、この『ソングライン』はフランスの農園でひなたぼっこをする牧歌的なアルバムである。チオビタのCMに使われた楽曲だけを集めた『くるりチオビタ』というコンピアルバムがあったが、雰囲気はそれに近い。しかし、タイトル曲『ソングライン』にしても、シンプルなサウンドと思いきやとんでもない多重録音で色々な音が鳴っているから、そういう奥深さを味わうのが面白い。

https://youtu.be/iz0iiDOBE4k

 

 

 

5.カネコアヤノ『祝祭』

バンドサウンドが特にマッチしている、と思った。弾き語りもいいけれど、フルアルバムとして聴くとなるとやはりバンドセットの方がいい。

1曲目『Home Alone』から『ごあいさつ』までの、特にロックバンド的な、強いボーカルの流れ、『ジェットコースター』『ゆくえ』あたりの弾き語りに近い静かな曲たち、そして『グレープフルーツ』『アーケード』。

『祝日』が名曲で、このアルバムの核であることは間違いないけれど、それ以外も捨て曲なし。

それにしても、華奢な体で幼げなルックスなのに力強い歌声で弾き語る、というカネコアヤノそのものの要素があまりにも漫画的・フィクション的で、本当にカネコアヤノって実在するのかな?と思うことがある。

https://youtu.be/Sh38JR2Vlk0

 

 

 

4.国府達矢『ロックブッダ

もはや伝説上の存在と化していた天才・国府達矢が15年振りにリリースしたアルバム。とりあえず、こんなへんてこで格好いいアルバムを聴けるのは2018年の”事件”だった。 

民謡を感じさせる独特なボーカル、極限まで鋭いリズム隊、それ自体もリズムを生み出し続けるカッティング主体のギター、それらが融合した強烈なグルーヴなど、言語化するのもやっとな、鮮やかな音楽体験があった(『薔薇』『感電ス』『祭りの準備』など特に)。

https://youtu.be/_UTeyWTZbUo

 

 

 

3.折坂悠太『平成』

ジャズ・ソウルなどのテイストを感じさせつつ、歌謡曲的な、和風の懐かしさがそれぞれの曲に通底する、不思議で魅力的なアルバム。

ピアノ・シロフォンマンドリン・コンガなどを取り入れた遊び心ある音作りだけでなく、そこで歌われている歌詞もまた力がある。

リード曲『平成』だけを聴くと、ともすればとっつきにくさを覚えるかもしれないが、『坂道』『逢引』なんかはポップ・ソングとしても聴けるほど耳馴染みがいいメロディーである。

 

しかしながら、このアルバムの全貌はまだ掴めていないように思う。もう少し聴きこまなければならない。

https://youtu.be/-30skTZ6aEg

 

 

 

2. ROTH BART BARON『HEX』

 新しいのに懐かしい、デジタルなのにアナログ、冷たいのに暖かい...あらゆるものの橋渡しをする記念碑的名盤。

コーラスが神々しささえ感じさせる『JUMP』『Homecoming』から始まり、リード曲『HEX』、低音がよく響く『VENOM』、テクノ・ポップ的アプローチの『JM』、コーラスを手がけたL10MixedItらしさがよく出ている、ヒップホップのようなトラックをバックにメロディーが美しい『SPEAK SILENCE』と、現在の海外の音楽シーンに肩を並べるような名曲ばかりである。メロディーはどこを切り取っても美しく、コーラスを多用した重層的なボーカルはポップ・ミュージックというよりも教会で歌われるような宗教音楽、特にゴスペルを思い出させる。

https://youtu.be/Gs86rS0e-Y0

 

 

 

1.cero『POLY LIFE MULTI SOUL』 

ceroの4thアルバム。今までのceroといえば、都会的・聡明さというイメージが強かったけれど、この作品では民族音楽の要素が強く、土埃の匂いを感じるようなお祭り的ムードが漂っている。リズム隊も民族音楽よろしく目立っていて、このアルバムを流しておくだけでずっと踊れる。先行でYoutubeに『魚の骨 鳥の羽根』がアップされて聴いたときには難解だと思ったが、アルバムを通して聴いてみると一番ポップだった。

このアルバムについて語るのはたやすいことではない。驚くほど多くのアイデアとイメージが繊維のように複雑に組み合って、アルバムはひとつの固い生地のまま手元にある。どこからどう解いていこうか、手がかりもなく途方にくれているが、ただひとつ言えるのはケンドリック・ラマーやディアンジェロがチャートを席巻しているこの時代において、ceroもまたポップ・ミュージックにおけるグルーヴの追求をしているのは何ら不思議ではないということだ。ヒップポップやソウルと”ジャンル”こそ違えど、アフロビートを解釈しながら、グルーヴの可能性を探っていくことには変わりない。すなわち、ceroはヒップホップやソウルとポップ・ミュージックの境界線を曖昧にする使者なのである。

2018年、平成が終わる年、日本のポップ・ミュージックにおけるソウル/クラブ/民族音楽の世界を更新するようなアルバムが現れたことを祝福したい。

https://youtu.be/ouef18CtxFU

2018年マイ・ベスト・ムービー

2018年に公開された映画から、個人的によかったものベスト10を邦画・洋画混ぜて選出しました。

とは言いつつも観られなかった作品も多くて、邦画では『万引き家族』『寝ても覚めても』『きみの鳥はうたえる』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』『斬、』『若おかみは小学生!』なんかを観ていないし、洋画では『ヘレディタリー 継承』『スリー・ビルボード』『君の名前で僕を呼んで』なんかも観ていないわけで。

これはもう、春まで受験生で映画観る余裕なんて無かった&夏休みは映画館皆無の田舎へ帰るという事情ゆえで...どうしようもないんですね...。

 

それではいきます。

 

第10位 少女邂逅

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 MOOSIC LAB2017の出品作品だけれど、劇場公開は2018年ということでランクイン。

リリィ・シュシュのすべて』を、若い女性監督が少女を主人公に、より現代的に描き直したような作品。

iPhoneと客観カメラと、2つの視点を同時に映し出すなどの斬新な映像表現もさることながら、主人公2人の立場がゆっくりと入れ替わっていく様を、スリリングに、残酷に描ききったのは素晴らしかった。

やっぱり俺は青春映画が好きなのね...と再確認した一作。

 

 

 

第9位 愛しのアイリーン

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 新井英樹原作のマンガを実写映画化するという難題に挑戦し、見事に成功させてみせた快作。

 エロ・グロもあるし人を選ぶ内容ではあるけれど、確かにポップではありつつ、一方で70年代80年代の土着的で執念深い日本映画を想起させるような、バランスのいい映画でもある。

また、アイリーン役のナッツ・シトイがアイリーンそのままという絶妙なキャスティングがないと成り立たない作品だったと考えると、奇跡的な映画と言えるかもしれない。

 

 

 

第8位 犬ヶ島

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今年のわんこ&にゃんこ枠

過去作のポップさと独特な構図はそのままに、もうとにかく犬がかわいい

犬だけじゃなく、スポッツの舌っ足らずな喋り方とか、奮闘する交換留学生たちとか、どこかおかしな日本の描写とか、圧倒的な密度でかわいい(愛しい)が盛り込まれている。

 

 

 

第7位 アイスと雨音

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74分のワンカットという手法が、その斬新さだけでなく、この作品における登場人物(とそれを演じる役者たち)を最も輝かすことに成功している。映画を観ている内に、劇中のフィクションとしての登場人物を超えて、それを演じる生身の役者が滲み出していると思った。

フィクションの形をとった、俳優たち、そして松居監督のドキュメンタリーとしても観られるのかもしれない。ものすごく熱量のある作品。

 

 

 

第6位 ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ

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今年はアクションもよく観た一年だった。

この『ボーダーライン』シリーズは1作目がとんでもなく面白くて、この2作目は正直、1作目と同じクオリティを維持できるかどうか不安に思っていた。でも実際には期待を超えてきた

1作目のアクション面のクオリティはそのままに、よりダークにシリアスさが増しているし、マット&アレハンドロのコンビがこんなに追い詰められるのか!と。

社会派アクションの中では最高峰の映画。

 

 

 

第5位 聖なるもの

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10位の『少女邂逅』と同じく、2017年のMOOSIC LABで出品されたものの、劇場公開は2018年のためランクイン。

脈略のない、めちゃくちゃな内容の映画に思えて、実は綿密な画面構成と、女性を徹底的に美しく撮る演出が上手く、不思議とついていける(ストーリーの破綻はしているけど、その破綻をも受け入れてしまう)。

この映画、言語化不可能なので実際に観るほかないです。

 

 

 

第4位 カメラを止めるな!

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これ超面白いんですよやっぱり。でも面白いだけじゃなくて何故か終盤には泣けてくるという、愛すべきエモ映画

2018年の映画を思い出すとき、この『カメラを止めるな!』が文句なしに代表作だと思うし、それって素敵。

 

 

 

第3位 アンダー・ザ・シルバーレイク

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暗号・陰謀論・都市伝説・音楽・映画・セレブ・ホームレス・犯罪・宗教とありとあらゆる要素をロセンゼルスの夜に放散させる、爆走カルトホラー映画

公開規模も大きくないし、あまり話題にはなってないみたいだけど、ああ、カルト映画の誕生に立ち会った、と観終わった後に興奮した。

あと、主演のアンドリュー・ガーフィールドカート・コバーンに見えた。

 

 

 

第2位 ボヘミアン・ラプソディ

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音楽伝記映画として映画史に残る傑作。

良くも悪くもライヴ・エイドのシーンがクライマックスになるような構成ではあるけれど、これは文句なしのクライマックス。『Radio Ga Ga』の途中で泣いた。

 この後に亡くなってしまうという事実を知っていながら、その人物の生涯を追うのってなかなか残酷で、基本的にはエンタメ映画でありながら、その〈予告された死〉をふとした瞬間に幾度か思い起こすことによって、フレディ・マーキュリーの生きていた時代とその人生が輝いて見えるという、そんな映画。

 

 

 

第1位 リズと青い鳥

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 いやあ~、いい映画。

一度観ただけでは理解できていない部分も多いし、できることなら手元に置いて、一つ一つのシーンや行動について、そこにどういう意味が託されているのか考えてみたい。

光の描写やオブジェクトの配置、身体性に目を向けて考察した記事もあるように、様々な見方ができる映画じゃないかなと。山田尚子監督、すごい。

 

 

 

〈今年の映画について〉

邦画ではやっぱり『万引き家族』と『カメラを止めるな!』が今年の代表作になるのかなと思いつつ『寝ても覚めても』『きみの鳥は歌える』『ハード・コア』や『ギャングース』といったような若手監督の意欲作、『愛しのアイリーン』『斬、』など重厚な作品も見逃したくなかった。

洋画は『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のようなモンスター級の作品が無くて、人によってベスト映画がバラつきそうな感じではないかと。それでも『ボヘミアン・ラプソディ』は日本でものすごく盛り上がったし、『バーフバリ』がブームになったのも面白かった。『バッド・ジーニアス』が良かったから来年はタイ映画にも注目かな・・・

 

 

 

〈来年の抱負〉

今年は人生で初めて一年のうちに10回以上映画館に行ったし、大学の狭くて過酷なDVDブースで旧作もたくさん観たし、映画を観る楽しさに気付いた一年でした。

が、暇だったのは今年度だけで、いよいよ2年生になると忙しくなりそうなので、映画を観る本数はだいぶ減るんじゃないかと思います・・・それでも映画を観ないと生きていけないんですが・・・

このブログも、レポート課題が無い期間でも文章を書く習慣をつけようと始めたものの、今ではふつうにレポート課題が出るので、自分でもなぜブログをやっているのかよくわかりません。でも〈カルチャーを発信する側〉には爪先だけでも属していたいので、当分は止めないと思います。何にせよ、今年もよろしくお願いします!ついに2020年まであと1年ですね!!

 

「MOOSIC LAB」とこれからの自主映画について

※「インディーズ映画」=「自主映画」として書いています。意味上での差異はありません。

 

2017年のMOOSIC LABで上映され、香港国際映画祭に出品された映画『少女邂逅』(枝優花監督)を先月末、劇場で観ることができた。

日本における2010年代のインディーズ映画を躍進させてきたのは、間違いなくMOOSIC LABというコンテンツであり、この『少女邂逅』はMOOSIC LABを象徴する作品として考えることができると思う。

 

MOOSIC LABは「音楽×映画」をコンセプトとして、作品ごとにアーティストをピックアップし、そのアーティストの楽曲を劇中に取り入れながら、もしくはアーティスト自身が劇中に登場しながら、これまで魅力的な映画を世に送り続けてきた。

音楽といっても、演歌や歌謡曲ではなく、主にコラボするのはインディーズロックバンドやアイドル、若手SSWなどである。言わばMOOSIC LABは、インディーズ音楽たちと共鳴しながら、若手映画監督がいろいろなことをできる舞台を造ってきた。

これまでの、日本の自主映画といえば、PFFぴあフィルムフェスティバル)が先導してきたように思う。PFFでも、スカラシップ制度などにより「PFFの次の一歩」を踏み出せる環境づくりをしてきた。しかし、スカラシップ制度は何年かに一度、それも選出されるのは一人だけであり、また劇場公開を前提として映画を製作することになるから、「次の一歩」としてはハードルが高かった。しかし、現在においては、MOOSIC LABが「次の一歩」を踏み出せる場として機能しているのは大きい。

例えば2017年のMOOSIC LABを『聖なるもの』で制した岩切一空監督は、前年のPFFで『花に嵐』により準グランプリを獲得しているし、同じく2017年のMOOSIC LABで『なっちゃんはまだ新宿』によって準グランプリを獲得した首藤凛監督は、同様に前年のPFFにおいて『また一緒に寝ようね』で審査員特別賞を受賞している。

 もちろんそれ以外の監督も多いけれども、MOOSIC LABが日本のインディーズ映画に新風を巻き起こすことに成功したのは疑いようがないし、それはPFFゆうばり国際ファンタスティック映画祭、東京学生映画祭など、自主映画・学生映画の他のコンペを巻き込みながら、また影響を与え合いながら、新しい才能の作品づくりをサポートし続けている。

 

MOOSIC LABの、他のインディーズ映画祭にはない特徴として、若い女性監督が躍進し続けているということが挙げられると思う。2013年グランプリ『おとぎ話みたい』(山戸結希監督)、2014年準グランプリ『おんなのこきらい』(加藤綾佳監督)、2015年グランプリ『いいにおいのする映画』(酒井麻衣監督)、2016年準グランプリ『脱脱脱脱17』(松本花奈監督)、2017年準グランプリ『なっちゃんはまだ新宿』(首藤凛監督)と、毎年のように女性監督の作品がグランプリや準グランプリを受賞している。それもあってか、MOOSIC LAB作品を上映する映画祭や劇場では、若い女性を多く見かける(これは仙台や札幌の会場での印象だから、本会場である東京では客層も異なるかもしれない)。

なかでも「少女映画の新たな金字塔」と評された『おとぎ話みたい』や、主人公の高校時代とその10年後を展開させ、熱量をもって「青春時代と、その呪縛から逃れられない現在」を描き、新たな手法の青春群像を生み出した『なっちゃんはまだ新宿』など、青春映画として捉えられる作品が多かった。

 それを踏まえると、グランプリ・準グランプリには選出されなかったものの、若い女性監督が少女二人を主人公にした『少女邂逅』はそれらの映画と同様、MOOSIC LABらしい作品であるように思える。

むしろ、『おとぎ話みたい』や『なっちゃんはまだ新宿』と比較すると、『少女邂逅』は音楽とのコラボラーションという要素は薄かったし、MOOSIC LABのもつポップさとは一線を画した、複雑かつ残酷な映画であり、岩井俊二監督の『リリィ・シュシュのすべて』の系譜に連なる作品として、MOOSIC LAB以外の文脈で語られる場面も多いのではないかと思う。

 

ここまでMOOSIC LABに特徴的な女性監督の系譜と、『少女邂逅』はその象徴的な作品であるという話をしてきたが、実は2017年を区切りに、MOOSIC LABは新たな局面に突入している。

「MOOSIC LAB 2018」のパンフレットにある、主宰する直井卓俊、映画評論家の森直人、コラムニスト・アイドル評論家の中森明夫による対談でも語られていることだが、2016年のグランプリ『マグネチック』(北原和明監督)、2017年のグランプリ『聖なるもの』(岩切一空監督)と、直近の2年連続して男性監督がグランプリを獲得しているのだ。『聖なるもの』はポップさを持ち合わせながら、凄まじいエネルギーで鮮烈な映像を次々に観客に提示し、フェチシズムや映画愛を内包させながら爆走した”怪作”であったが、この”怪作”にグランプリを与えたMOOSIC LABは見事だとしか言いようがない。こうして、「MOOSIC LAB=女性監督」というイメージは一新されつつあるのかもしれない(といいつつ、今年の作品を見てみると、『月極オトコトモダチ』や『暁闇』など、女性監督の作品がグランプリを獲るのではないだろうか)。

 

もう一つ、これも対談で語られていることだが、『カメラを止めるな!』の出現が日本のインディーズ映画に大きな変化をもたらすことが予想されている。

2012年から今まで、MOOSIC LABが醸成してきた、若手監督や学生監督のもと、芸術性や実験性が付与された作品群を世に送り続け、商業映画との差異を明確にするという精神性と、『カメラを止めるな!』が実現してみせた、商業映画ではないが、商業映画のような、誰もが楽しめるエンターテインメント性を持ち合わせた映画づくりの精神性とでは、異なるものがある。

そこには、『カメ止め』がインディーズ・商業問わず映画界を席巻した2018年を境に、インディーズ映画界にも「第二のカメ止め」を目指す風潮が生まれるのではないかという危惧がある。別にそれ自体は批判すべきことではないのだが、MOOSIC LABが作り上げた流れが停滞してしまうかもしれない。言わば、3作品が劇場公開を果たした2017年がMOOSIC LABのピークで、それ以降は過去を超えられないかもしれないと...

しかしながら、MOOSIC LABやPFFの作品がもちうる「理解し得なさ」は商業映画にはない大きな魅力である。『カメ止め』は99%の人がその面白さを理解し、多くの人に受け入れられる。一方、たとえば『聖なるもの』はその作品世界を40%程度の観客しか受け入れられないかもしれない。しかし、受け入れた40%の観客にとっては、商業映画では体感することのできない、奇跡的な映画の出現に立ち会ったという感動がある。

『カメ止め』のような、商業的な成功を目指すのならば、MOOSIC LABの作品群の趣向はこれまでとは変化していくだろう。けれども、商業的な成功/失敗という考えにとらわれすぎず、実験的精神のもと音楽と映画の融合に熱意をもってトライし続ける若手監督(いやむしろ、今年『無限ファンデーション』を出品した大崎章監督のように、ベテラン監督の参入もこれから増えていくかもしれない)がいるかぎり、MOOSIC LABはこれからも続いていくのだろう(と願っている)。

 

とはいえ、自分のように東北や札幌に住んでいると、MOOSIC LABの作品を観ることができる機会はわずかしかない。それでも、今年は札幌でも、出品された作品をセレクトして上映した「MOOSIC LAB 2018 SAPPORO」が開催されたし、仙台短篇映画祭では「ムーラボ旋風」と題したプログラムで新作を含む5作品を上映した。これからどこまでMOOSIC LABが存続していくかはわからないが、若手監督の新たな作品発表の場として確かなものになりつつあると思うし、その才能たちが生み出していく映画にこれからも期待を寄せ続けていきたい。 

くるり『THE WORLD IS MINE』(2002)

くるり『THE WORLD IS MINE』は前作『TEAM ROCK』から約1年1ヶ月ぶりとなる4thアルバムである。

 

以下、1曲ずつ感想を。

 

1.GUILTY

 ちょっと低めの心電図の音のような電子音を刻みつつ、ゆったりとアコギを中心に流れていく。しかし、途中で曲調は一変し、激しいドラムの後に美しいコーラスが響くというドラマティックな展開。初めてこの1曲目を聴いたとき「あ、このアルバムはなんかすごいぞ」と思った。

2.静かの海

 前作『図鑑』でみせた音響系の遊びを取り入れつつ、より静かに、チルアウト的な様相を呈している曲。

3.GO BACK TO CHINA

 銅鑼やギターリフが中華風味で面白いアプローチをしている。単体で聴くと2曲目までの流れに合わないような曲調だが、2曲目がフェードアウトした静寂の中のイントロはシビれる。

4.WORLD'S END SUPERNOVA

 くるりにおけるダンスミュージックの到達点といえる名曲で、当時流行っていたダフト・パンクなどをうまく消化して、日本的な情緒をも生み出すことに成功している。ただただビートに乗って体を動かすだけで快楽を得られる曲。

5.BUTTERSAND/PIANORGAN

 インスト。前曲と同じ電子音のループで、同じリズムがキープされる。それほど大きな展開があるわけでもなく、前曲の流れでそのまま踊りたい人のためのボーナスステージといった感じ。

6.アマデウス

 ストリングスを取り入れつつ、ピアノがリズムをキープしている。優しい静かなバラード。「旅はこれから これから」の部分はいい。

7.ARMY

 なんとなくテレヴィジョンの「MARQUEE MOON」のような歪みのないギターサウンドが面白い。曲全体に大きなうねりがあるようで、リズムに乗ることができて楽しい。

8.MIND THE GAP

 アルバムの流れを一旦、区切るような曲。これはこれでいいけど急にサイケデリックすぎると思わないでもない。

9.水中モーター

 ギター、ドラムなどは「ワンダーフォーゲル」と似た雰囲気がある、(音は)素直なギターポップ。ボーカルに、スキューバダイビングのゴボゴボしたエフェクトをかけているのが特徴的。アウトロが長い。

10.男の子と女の子

 アコギのシンプルな曲。くるりらしからぬ、ひねくれていない歌詞で、メロディーも印象的でダレない。しかし、逆に歌詞は素直すぎて気恥ずかしい。

11.THANK YOU MY GIRL

 ダンスロック、テクノもいいけどやっぱり、くるりにはギターポップが似合うな、と嬉しくなる。小曲ではあるけれど、このアルバムにおける存在感は大きい。あと、コーラス、ギターソロなどビートルズの「And Your Bird Can Sing」を思い出す。

12.砂の星

 幸福感あふれる曲。しかしサビは短調で、切ない雰囲気もある。

13.PEARL RIVER

 入眠にバッチリのまったりとした曲。2ndの「宿はなし」、3rdの「リバー」と、アルバムの最後にはフォーキー、カントリーな曲が続いてきたが、今回はボートを漕ぐ音のまま終わる。

 

総評

 前作『TEAM ROCK』でのテクノ、ダンスミュージックへの取り組みを更に深め、より洋楽の音楽性に近付いたアルバム。テクノ、ダンスだけでなく、サイケデリックサウンドにも傾倒していて、くるりとしては初めて海外(イギリス)でレコーディングしたこともあり、実験的な側面が強い。

 1曲1曲としての印象はあまり強くないけれど、アルバム全体を通して聴くと重厚感があり、統一感も失われていない。しかし、全体的にポップではなく、難解かつ洋楽のアルバムにある雰囲気が強いためわかりにくいアルバムである。そのため、名盤とする人がいる一方で、まったく理解できない、気に入らないという人もいる。くるりを初めて聴く人、なかでもダンスミュージックやテクノに特に興味がない、または洋楽の音楽性が苦手な人にはおすすめできないアルバムとなっている。

 なお、このアルバムを最後にドラムの森が脱退する。

オススメはこの曲!

 1.GUILTY

 3.GO BACK TO CHINA

 4.WORLD'S END SUPERNOVA

 11.THANK YOU MY GIRL

 

youtu.be

映画『生きてるだけで、愛。』を観たけど・・・という話②

以下、①の続きです。

 

次に、『勝手にふるえてろ』と比較して気になった点。

・主人公の行動があまりに突飛すぎる

 『勝手にふるえてろ』のヨシカも、まともな行動や思考をしているわけではないのだが、この映画の主人公・寧子の行動・思考はエキセントリックすぎる

 これは、映画が悪い云々ではなく、本谷有希子の形成するキャラクターに自分が合うか合わないかという問題である。急に体毛を剃る、急に走り出す、急に全裸になる、こういった行動をする主人公に自分を重ね合わせることのできる人ならば、この映画は合うのだろう。

 実際、小説と映画という表現の場の違いはある。小説の中で主人公がこういう突飛な行動をしても、その行動の意味を咀嚼する時間は、自分が本を読み進めるスピードを調節すれば容易に確保することができる。しかし映画を劇場で観ている限り、いくら意味不明な行動が繰り広げられても映画を一時停止することなどできない。私のような人間からすれば、行動原理を理解しないうちに次のシーンへと切り替わり、置いてけぼりにされてしまう。

 であるから、原作小説は、読んでみると意外と違和感がないのかもしれないなあ、と思う。読むか読まないかは別である。

 『勝手にふるえてろ』と根本的に異なるのは、『勝手に~』は女性監督(大九明子)、『生きてるだけで~』は男性監督(関根光才)であるということ。寧子なんか、男性からみた、エキセントリックで魅力的な(まあ、エロいといったほうがいい)女性という感じで、理想が顕出してたっすよ。

・人間味のない周辺人物

  安堂の行動原理が意味不明と前回に書いたとおり、掘り下げが甘い登場人物ばかりである。寧子以外の登場人物は大体そういった感じである。

 『勝手にふるえてろ』においては、ヨシカの恋人「二」はもちろんヨシカの同僚・来留美、ヨシカが憧れていたイチに関しても、ヨシカが抱いているイメージ(=観客に与えられるイメージ)が裏切られる瞬間がある。

 対して、安堂、カフェ経営の夫婦とアルバイト、こういった面々のそれぞれに我々が抱いているイメージは最後まで裏切られることはない。特に寧子が働かせられているカフェ経営の夫婦は、寧子に対して常に奇妙なほどに優しく、結局、最後まで寧子に感情のこもった叱咤をしたり、自分の弱さを見せるようなことはなかった。そういった役割の人物ではないと言われればそうなのだが、それにしては画面に映っている時間が長く、観ている側としてはその「裏」を期待してしまう。結局何も無かったが。

 津奈木に関しては、寧子が本編で口にしていたように、言葉で感情を表現する場面が少なく、何を考えているかあまりわからないため感情移入できる隙間もない。でも窓からPCを投げるって・・・ あんな高い階から投げて、通行人に当たったらどうするつもりだったんだろう。PCが砕ける様子もたっぷりスローモーションだったなそういや。

総じて、主人公以外の登場人物の人物描写は浅かったということである。

 

まあ、寧子を演じた趣里の迫力!とか世武裕子さんのエンディング曲が素晴らしい!とかいいところもあるから、人を選ぶけれど、大きなエネルギーをもった映画ということで、合う人には合うのではないだろうか。そういえば劇場でも女性が多かったから、菅田将暉ファンがいるということも含め、女性に受け入れられやすい映画なのかも。

 

おわり

映画『生きてるだけで、愛。』を観たけど・・・という話①

先日、公開されて3週間ほど経ったのちに『生きてるだけで、愛。』を劇場へ観に行った。

この映画を観る前の予備知識といえば、

・原作は本谷有希子である

・監督は劇場長編映画初監督で、これまでは主にCMやMVを撮っていた

・主演は『おとぎ話みたい』の趣里

これくらいのものだけど、ポスターをみる限り良さそうだし、個人的には山下敦弘監督『ハード・コア』や入江悠監督『ギャングース』と共に、11月公開の邦画の中で最も注目していた映画のひとつだった。それゆえに、けっこう期待もしていた。

それに、本谷有希子作品は『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の映画を観て、割と好きだったから、この『生きてるだけで~』もきっと自分に合うだろうと、特に心配はしなかった。

逆にいえば、『腑抜けども~』以外は本谷有希子作品と接したことはなかったのだが・・・

 

あらすじ

生きてるだけで、ほんと疲れる。鬱が招く過眠症のせいで引きこもり状態の寧子と、出版社でゴシップ記事の執筆に明け暮れながら寧子との同棲を続けている津奈木。そこへ津奈木の元カノが現れたことから、寧子は外の世界と関わらざるを得なくなり、二人の関係にも変化が訪れるが……。

                                                                                 (filmarks より)

 

さて、この作品は『勝手にふるえてろ』(の映画)と似た構造を持っている。

「他人と接することが苦手な若い女性が主人公」

             ↓

「挫折したり、ちょっとうれしいことがあったり。そんな中、勇気を出して一歩を踏み出したけど、やっぱりうまくいかない」

             ↓

「クライマックス、感情を爆発させて自分の思いを吐露する」

             ↓

「主人公に寄り添ってくれる根気強い男性と、新しい関係がスタートする」

             ↓

「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」

 

ざっくりいうとこんな感じなのだが、主人公の女性とその恋人の男性、物語の展開などは共通しているように思う。

しかし、なぜ『生きてるだけで~』は『勝手にふるえてろ』のような傑作となり得なかったのか。いや実は、『生きてるだけで~』を傑作として認識している人もいるだろうし、実際のところ、この映画をひたすらに批判するような感想は今のところ目にしていない。なので今回は私が矢面に立つことになった。

 

※以下、ネタバレあり

 

まず、『勝手にふるえてろ』と比較してどうだという前に、この映画だけ観て気になった点をいくつか。

・CM、MVとして観れば綺麗で印象的な場面

この映画、走っている場面が何度かあり、例えば青いスカートが揺れている様子をスローモーションにしたり、走りながら服を脱いだりする。これらの場面は確かに、「MVのカットとしては」美しい。しかし、映画の一場面として挿入されると、何だろう、違和感を覚えてしまうのだ。

映画というフィルターを外してみたときには、あまり画として「強くない」場面が、映画の中の一場面として登場すると、とても印象的になることがある。

『生きてるだけで~』では、「画としては強くないが印象的な場面」はあまりなかった。むしろ「画として強いわけではなく、かといって印象的でもない場面」と、先述の強烈な場面「しか」ないため、映画としてバランスが悪くなってしまったのだ。その強烈な場面にしても「どうだ、この画、すごいだろ~!」というように、画の押し売りをされているように感じて、冷めてしまった。また、強烈な画を提供するにしても、登場人物の心情とリンクしていればいいのだが、寧子の行動はあまりにも突飛すぎた。

・一つのシーンが長く、シチュエーションが少ない

全体的な傾向として、一つ一つのシーンが(無駄に)長い。もちろん、必要があってそのように演出しているシーンもあるかと思うが、その例外もいくつかあった。

(本当は、具体的なシーンを例にしたいけれども、そんな印象に残らない冗長なシーン、覚えてないんだよなあ・・・)

もう一つ、物語が展開されるシチュエーション(場所)のパターンが少ない。

基本的には自宅、カフェ、オフィスの3つの場所で全て展開していくから、パターンが少ないなあ、という印象になるのは仕方がない。恐らく、原作は映画よりも舞台の方が向いているのだと思う。まあ『生きてるだけで~』の原作は戯曲ではないけれど、戯曲を映画化するのは難しいわなこれが。

・屋上のシーン、安堂は必要なのか?

これに関しては完全に個人の好みの問題だけれど、クライマックスである屋上のシーン、安堂が介入する必要ってあるのかな・・・?

安堂は屋上で、「陰で二人の会話を盗み聞きする」→「津奈木に復縁を迫る」→「津奈木に軽くあしらわれる」という感じだったけど、安堂は2人が互いの感情をぶつけた後に介入してくるから、完全に蛇足!

また安堂は最後まで情報・描写が不足していて、なぜこんなに面倒くさい方法で津奈木と復縁しようとするのか、津奈木は安堂をどう思っているのかといった、劇中で繰り広げられる奇妙な行動の原理を解明するような情報提供は一切無いので、全くわけがわからない人物だった。最後のあしらわれかたも雑だし。

というわけで、原作ではどうなのかわかりませんが、屋上のシーンに安堂は要らなかったです!

 

 

 

長いので、ここで一旦区切って、後半は次回です。